01　とんかつ 薩摩 四天王寺　【後編】

綿実油を使うプロの料理人を訪ねる連載の第1回は「とんかつ 薩摩 四天王寺」を取材しました。とんかつの味を左右する油にこだわる店主の安原さんは、綿実油を20年以上選び続けています。後編では綿実油を使い始めたきっかけやその魅力、揚げ方のこだわりなど詳しく伺いました。

理想の軽さを求めて綿実油と出会う。

綿実油との出会いは、安原さんが2002年にとんかつ店の料理長を任されて2ヵ月目くらいだった。「最初はサラダ油を使っていたのですが、劣化すると油に粘りが出て重くなるのが気になって。忙しいと油の劣化が早く感じたこともあり、以前から軽く仕上がると聞いていた綿実油を試したのがきっかけです」。実際に使ってみた感想は「さらっとしたいい油で、劣化を感じない所に驚きました。サラダ油が劣化すると油特有の匂いが上がってくるのですが、綿実油は軽さも匂いも全然変わらなくて。私が求めていたサクサクした食感を実現できたので、すぐに綿実油に替えました」と振り返る。

薄衣のサクサク感は、綿実油100％を使っているから。

ほんのりピンク色のレアな状態で提供する技術。

調理の工程を見せてもらったが、注文が入ってから肉をカットし、厚みがある肉に下味は付けず丁寧に打ち粉して卵にくぐらせ、オリジナルのパン粉を優しくまとわせる。黄金色の透き通ったたっぷりの綿実油に沈ませるとシュワッと泡が広がる。その様子を「泡が踊り出す」と表現する安原さん。一定の温度でしっかりと揚げ、火が通ってふわっと浮き上がれば油から取り出す目安だ。「油切りしたあとも余熱で火が通るので、お客様が食べるときにほんのりピンク色のレアな状態で提供できるよう時間を計算して火入れしています。旨味や水分をギュッと閉じ込めて、衣はサクっと中はジューシーに仕上げます」。重さがある分厚いロースやリブロースは浮き上がらないので、油から出すタイミングは経験が必要だ。油と向き合ってきた豊富な経験に裏打ちされた技術で、揚げたてのおいしい状態のとんかつを提供している。

ひとつ一つの素材を味わう串カツも軽やかでおすすめ。

とんかつ以外に綿実油の魅力を感じるメニューを聞くと「串カツがおすすめです。新鮮な野菜や肉、海鮮など、ひとつ一つの素材を楽しめます。串カツに使うパン粉はとんかつよりもさらに目が細かいので、綿実油ならではのサクッと感と軽やかさを味わえます」と教えてくれた。定番メニュー以外に鱈の白子や裏ごししたサツマイモでバターを包んだサツマイモバターなど、旬の食材や意外性のある食材を取り入れた期間限定の創作メニューもお客様に喜ばれている。

毎日食べても胸焼けしないとんかつを食べてほしい。