09 パンツェロッテリア 【後編】
イタリアで親しまれるパンツェロッティを、日本で独自の“包み揚げ料理”へと進化させた松濤のレストラン「パンツェロッテリア」。その味を支える重要な存在が、綿実油です。後編では、この綿実油を使う理由や魅力、メニューへのこだわりについて、さらにお話を伺いました。

目も舌も喜ぶ、アートのようなひと皿。
おすすめを尋ねると、「一番は選びにくいですね」と笑う西さん。確かに前菜、肉料理、サラダ、パンツェロッティ…どれも魅力的なものが並び迷ってしまう。
その中からまず選んだのは「熟成ハムの盛り合わせ」。選び抜いた数種のハムを目の前でスライスし、花びらのように盛り付ける。添えられた、ふんわり軽いニョッコフリットは、綿実油で揚げたもの。「これは付け合わせの揚げパンで、ハムを巻くと美味しいですよ」と教えてくれたのは、調理場を支える國本さん。「綿実油は油切れがとてもいい」とのことだ。
続いて運ばれた「日替魚カルパッチョとオレンジ・野菜・ヴェネグレットソース」には、皆から感嘆の声。絵画のような華やかな彩りで、新鮮野菜と刺身にかかったドレッシングにも綿実油が使われている。サッパリとした味わいで、自然と食が進む。どれも彩りと美味しさが際立つのは、西さんのセンスがあってこそだ。


綿実油だと、手で持ってもベタつかない。
店の味を支えているのが、偶然大阪の店で出会った綿実油。早速使ってみると、油切れの良さと軽い食感に「これだ」と確信したという。
「生地を焼くとバリッとしてしまう表面が、綿実油で揚げるとサクサクとした、他にはない軽い食感が生まれるんですよ」。さらに、気軽に手で食べてもらいたい“包み揚げ料理”にとって、「そのまま持ってもベタつかないのがいいですね」とのこと。胃にももたれにくく、お客さまからも好評だそう。
「この油がなければ揚げピザはやっていなかったかも」と語るほど、今では店に欠かせない存在だ。「お客さまが続けてきてくださるのが、一番の反応で答えですよね」と西さんは微笑む。
“包み揚げ料理”がつなぐ、世界の味。
パンツェロッテリアのメニューには、イタリアをはじめ、アメリカ、スペイン、アイルランドなど各国の名を冠したものが並ぶが、日本らしいアレンジも豊富だ。
「角煮や田楽はイタリアにはないけれど、恋しくなる味だったんです。パンツェロッティに入れてハンバーガーのように食べられたら美味しいだろうなと思って」と西さん。
具材ひとつひとつに物語があり、味のイメージを思い浮かべながら選ぶ時間も楽しみのひとつとなる。

今回は「ピリ辛トマトソースとサルシッチャのパンツェロッティ」を注文。
ボリュームのあるひき肉に、ほんのり辛味を効かせたトマトソースが絶妙なバランスで、揚げたての生地とよく合う。香りと旨みがじゅわっと広がり、「『焼いているのでは?』とよく言われるんです」と西さんが話すほど、揚げ物とは思えない軽い仕上がりだ。
素材の美味しさを引き出す油。
綿実油の特徴のひとつは、素材の味を邪魔せず、最大限に引き出すこと。“包み揚げ料理”でも、厳選した小麦粉の香りともちもち感が綿実油によって活かされている。
「紫カリフラワーなどの季節野菜も、素揚げするだけで本当に美味しいんです」と、カウンターに並ぶカラフルな野菜を手にして話す西さん。素揚げした野菜をハーブ塩で味わうメニューも人気のひと皿だ。先述のニョッコフリットやカルパッチョのドレッシングも含め、パンツェロッティだけでなく、付け合わせや前菜まで“綿実油ならではの軽さと香り”が一体感を生み、料理全体の調和を高めている。
美味しい料理と異国情緒漂う空間、あたたかなオーナーとの会話。これだけ揃えば、リピーターが多いのもうなずける。

日常にそっと灯る、心がほどける場所として。
パンツェロッテリアではECサイトで“揚げピザ”の販売も行っており、「今後は通販の拡大にも力を入れて“揚げピザ”の知名度をもっと広げていきたい」と西さんは話す。
しかし根底にある想いは変わらない。「大切な人と、いつもとは違うこの空間で、ゆっくり食事と雰囲気を楽しんでほしいですね」。駅から少し離れているからこそ、店に着いた時の喜びが大きく、心が静かにほどけていく。
食事を楽しみ、会話を楽しみ、ゆったりと時間を過ごす。そんな時間を灯し続ける店でありたいと西さんは語る。


オーナー 西 正博 さん
日本とアメリカの大学を卒業後、就職を経てイタリアの大学でインテリアデザインを学ぶ。その後、アンティークの買い付けから着想を得て、家具や洋服を製造販売するビジネスを立ち上げる。ミラノとニューヨークに店舗・ショールームを構え、両都市を頻繁に行き来しながら日本でも販売を開始。さらにバッグのコレクションを手がけ、たびたび友人を訪ねていたアイルランドに工場を設けて製造を行うなど、活動の場を世界各国へと広げていった。こうした25年におよぶ海外生活の中でさまざまな国の料理を味わった

PANZEROTTERIA(パンツェロッテリア)
住所:東京都渋谷区松濤2丁目14-12 シャンボール松濤1階
電話番号:080-2675-7216
営業時間:18:00〜23:00 (LO 22:00)
定休日:定休日:月曜(祝日の場合は営業)および火曜
席数: 20席
Website:https://panzerotteria.jp/
公式アカウント:https://www.instagram.com/panzerotteria_tokyo/



