08　 FRECKLE donuts　【後編】

パティシエの技と日本の素材から生まれたフレンチクルーラー専門店「FRECKLE donuts」。後編では、このドーナツの美味しさを作るもう一つの素材「綿実油」について、西山さんにお話を伺いました。

理想の味を支える、油へのこだわり。

ドーナツは、シンプルな素材を油で揚げて仕上げる菓子。だからこそ、どんな油を使うかで味わいは大きく変わる。「菜種油やショートニングなど、いろいろ試して検討しました。時間が経つと油の匂いが気になったり、食感が重くなったりして、なかなか納得のいくものが見つからなくて」と振り返る西山さん。
特に粉糖をまぶしたシンプルな「スノーシュガー」は小麦や卵の味を繊細に感じられるため油の影響を受けやすく、理想の軽さを出すのに苦労したという。そんな折、油問屋から綿実油を紹介され試してみたところ「これならいける」と確信した。
その油は、岡村製油の〈ホワイトコットンオイル〉。雑味のない油が生地本来の風味を引き立て、さっくりと軽く中はふわっとした口どけを実現した。

ドーナツの味を決める、綿実油。

手しごとが生む、やさしい甘さと香り。

FRECKLE donutsは、小麦粉・全粒粉・卵・バター・きび砂糖を使ったシュー生地がベース。
添加物や保存料は一切使わず、一つひとつ丁寧に手作業で仕上げていく。大きさと重さをそろえて絞り出し、カラッと揚げたらフレーバーごとのグレーズをまとわせ、クラッシュアーモンドを“そばかす”のように散らせば完成だ。種類によっては、クリームやジャムをサンドするものも。
「熟練の技で丁寧に作るのを心がけています」と西山さん。看板商品でイチオシの〈フレクルドーナツ〉は軽やかでやさしい甘さが魅力。「昔の味たまご」を使った濃厚な〈カスタード〉や、塩味がアクセントの〈塩フレクル〉も人気だ。
季節限定のシーズンメニューもあり、訪れるたびに新しい味と出会えるのも楽しみのひとつとなっている。

“ドーナツに日本茶”という、新しい余韻。

もうひとつの特徴が、ドリンクに日本茶をセレクトしているところ。「このあたりは美味しいコーヒー屋さんが多いので、あえて日本茶を選びました。せっかく日本の素材で作っているのだから、飲み物も日本で生まれたものがいいと思って」と西山さん。

これからも、笑顔を生むドーナツを。

愛情を込めた大切に育てられた日本の素材に、パティシエとしての技と感性を重ね、一つひとつ丁寧に仕上げる。「素材の美味しさをきちんとドーナツで伝え、たくさんの人に喜んでもらいたい」という西山さんの思いが、味にも品質にも表れている。
最後に今後の展望を尋ねると、「長く愛されるドーナツ屋でありたいと思います。『あそこに行けば美味しいドーナツがあるし、それを手土産にすればみんなが喜ぶよね』と言っていただけるお店にしたい」と穏やかに語ってくれた。
その手とアイデアから生まれるドーナツは、これからも多くの人に笑顔としあわせを届けていくに違いない。