08　 FRECKLE donuts　【前編】

代々木公園駅から徒歩3分。上質さと感性が日常に溶け込むこの街には、自然豊かな公園やおしゃれなカフェが点在しています。その一角に店を構えるのが、日本発のフレンチクルーラー専門店「FRECKLE donuts（フレクルドーナツ）」。老若男女に愛され、SNSやメディアでも話題の人気店です。
今回はその魅力の秘密を探るべく、お店を訪ねてお話を伺いました。

笑顔を生み出す、まあるいスイーツ。

代々木公園のほど近く、静かな裏路地に黄色い看板が目を引く小さなショップ。次々と人が立ち寄り、窓口でメニューを見ながらドーナツを選ぶ光景が日常の一コマに溶け込んでいる。
ここにあるのはフレンチクルーラーのみ。FRECKLE donutsは2024年のオープン以来、その斬新なコンセプトと確かな美味しさで瞬く間に人気店となった。
「たくさんの笑顔を生み出せますように」という想いのもと、カラフルなドーナツを見れば、誰もが笑顔になる。
レギュラーメニュー6種類に加えて季節限定のメニューが1、2種類の全8種類。「おすすめは店名にもなっているフレクルドーナツですね」と語るのは、シェフパティシエの西山生恵さんだ。

パティシエの感性が生んだ、唯一無二のフレンチクルーラー。

西山さんは運営会社が展開するビストロ業態のデザートを監修してきたパティシエ。事業拡充で新たにドーナツ店を立ち上げる際、そのセンスと技術を高く評価され相談を受けた。
「他のドーナツと差をつけるならパティシエとして何ができるかを考えたときに、フレンチクルーラーが思い浮かびました」と西山さんは振り返る。軽やかで口どけのよいシュー生地なら、これまで培ってきた技を最大限に活かせると感じたという。
試行錯誤の末、店名の由来でもある“そばかす”をヒントに、グレーズ（ドーナツを覆う薄く半透明の砂糖衣）の上にオリジナルのナッツを散らした現在のスタイルが誕生。ふんわりとした生地の美味しさを引き立てる、唯一無二のドーナツが完成した。

生産者の想いを、ドーナツに込めて。

FRECKLE donutsの魅力は、軽やかな食感と、素材へのまっすぐなこだわりにある。
「農家さんや作り手さんから直接いただいた食材を、そのままドーナツに落とし込んでいます」と西山さん。生地には、北海道・十勝産の全粒粉と小麦粉、神奈川〈昔の味たまご〉の卵を使用。どれも信頼する生産者から仕入れるこだわりの素材だ。
「以前はビストロで農家さんと直接やり取りし、現地を訪ねて思いを伺い、それをデザートに活かしていました。そのご縁をドーナツにもつなげています」。香りと甘みが豊かな小麦、昔ながらのしっかりとした味わいの卵。その風味がふわりと広がる香ばしさは格別だ。素材の力を丁寧に伝える味が、多くの人の心を満たしている。

香り、食感、余韻。パティシエが描く味のレイヤー。

同じ生地から生まれるとは思えないバリエーションがあるのも、もうひとつの魅力だ。煎茶や紅茶を練り込んだり、クリームやジャムをサンドしたりと、個性あふれるフレーバーが並ぶ。

世代を越えて愛される、甘いしあわせ。

FRECKLE donutsは、幅広い世代に親しまれている。「小学生が“1個ください”と買いに来ることもあれば、おじいちゃんやおばあちゃんが“PayPay使ってみたの”と笑顔で話してくれることもあるんです」と西山さんは微笑む。
女性客が多いと思いきや、男性のファンも多く、差し入れや手土産としても人気なのだそう。「メディア関係の方や外国人のお客さまも多いですし、SNSやYouTubeで紹介してくださる方も多いんです」。お気に入りの味を見つけて通う常連も多く、「ここのドーナツだけは別」と言われることも少なくないという。
黄色のボックスに詰められたかわいいドーナツは、手土産にも、自分へのご褒美にもぴったり。たくさんの人に、日常の中の小さな幸せを届けている。