じっくり揚げてもさっぱり仕上がる綿実油の実力

04  芋菓子匠 嶋屋 【後編】

戦後からの味と店を守り続け、さつまいものお菓子で幸せなおいしさを全国に広げている「嶋屋」の三代目・佐々木さん。名物「阿倍野ポテト」の特徴にもなった綿実油との出会いや、使った実感などお話を伺いました。

揚げたてのポテトを特製蜜に漬けると、膨らんだ空洞へ一気に蜜が吸い込まれて柔らかくふっくら、時間が経っても固くならずしっとりと仕上がる。

名物の特徴にもなっている綿実油。

名物「阿倍野ポテト」は揚げる工程があるため、油は必要不可欠なもの。
「昔は菜種油を使っていました」という佐々木さんに綿実油へ変更したきっかけを尋ねると「今から20年以上前に油の問屋さんから薦められて。おいしい天ぷら屋さんが使っているから、『嶋屋』さんも使ってみたらと言われて試してみました」とのこと。
早速試してみると「油臭さが少なくてカラッと揚がる」と実感があったようだ。そこから綿実油を使うようになり、自社のウェブサイトでもそのメリットを謳うまでに。
「しっかりアピールしているくらい、綿実油はうちのポテトの特徴のひとつになっていますよ」と教えてくれた。

翌日までおいしく食べられるさっぱり感。

ごろっと大きめにカットされているのも「阿倍野ポテト」の特徴のひとつ。
「これ以上大きいと食べにくいし、小さいと固くなってしまう。ふっくらホクホクのいい状態で火が通るベストなサイズにしています」。それを低温の綿実油で約20分、微妙に幾度も温度を変えながら揚げていく。「ここが当店の伝統と技が最も詰まった大事なところ」だそう。
サクッと軽く仕上がる綿実油だから、じっくりと時間をかけて揚げられる。「綿実油はさっぱり感があるくらいカラッと揚がるし、時間が経っても油臭さがほとんどないので、次の日でもおいしく食べられるんです」。
綿実油がそのおいしさを後押ししているのは間違いなさそうだ

匂いも気にならず長持ちする油。

人気店であるがゆえに、接客に製造にとみんなフル回転の毎日。「忙しい時は1日100kgくらい揚げています」。
これだけ揚げると、すぐに油が傷んで交換が大変なのでは?と感じるが「劣化しにくいのも綿実油のいいところですね」とのこと。
大量にさつまいもを揚げても匂いや劣化が気になることなく、カラッと絶妙なポテトに仕上がるそうだ。
「原価をできるだけ抑えたいところだけど、『食用油の王様』といわれるだけあって天然のビタミンEが豊富だし、リノール酸やオレイン酸も含まれているので健康面でもメリットが多い。仕上がりや劣化を考えても、綿実油はこれからも欠かせません」

油と相性のいい、昔ながらの品種。

「厳選した国産のさつまいもにこだわっています」と言うように、同店では最良の環境で育った契約農場のさつまいもを使っている。
品種は創業当初から変わらない「高系14号」。昔ながらの優良品種で甘くホクホクとした元来の食感が楽しめることが特徴だ。
「近年は生産量が減ってきたので、時期によってはなくなってしまう。その時はシルクスイートを使っています」とのこと。これもホクホク感と甘みが絶妙な人気の品種。
佐々木さんは「綿実油で揚げて、ちょうどいい具合にできる品種選びは大切ですね。焼き芋にしてもおいしいので、どちらもぜひお楽しみいただけたら嬉しいです」と話す。

受け継がれる味、広がる味。

綿実油をはじめ、素材や独自の製法にこだわった「嶋屋」の味は、テレビや雑誌で数え切れないほど取り上げられ知名度を増していった。
こうしたことから、「第6回大阪市あきないグランプリ『売れ筋商品・逸品部門』」で優秀賞を受賞、また「食べログ和菓子・甘味処 WEST 百名店2023」にも選出されるなど各方面から評価を得ている。
「『ここのん食べたらよそのん食べられまへんわ』など、嬉しいお言葉をかけていただくことがよくあるので励みになります。これからもぜひ皆さまに喜んでいただける芋菓子を作っていきますので、ぜひお越しください」

綿実油とさつまいものコラボレーションは、きっとこれからも多くの人に幸せな笑顔とおいしさを届けることだろう。

店長 嶋屋三代目  佐々木信行 さん

幼い頃から祖父や父が「嶋屋」を営む背中を見て育つ。朝ご飯やおやつで「嶋屋」の商品を食べることが日常だったこともあり、この店を守っていきたいと、いつしか継ぐことを考えるように。学生時代にアルバイトとして手伝いはじめ、卒業と同時に入社。各店舗での販売や製造を行う傍ら、Windows98の導入とともにいち早く会社のホームページを自ら立ち上げ、需要が高まった地方発送に対応する。2003年には楽天市場店をオープン。数年前に代表取締役を就任し、三代目として店の舵をとっている。

芋菓子匠 嶋屋

住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋2-4-37
電話番号:06-6621-7167
営業時間:9:30~20:00(本店)
定休日: 年中無休(本店)
※テイクアウト専門店
※天王寺ミオ店、阪急梅田店、天下茶屋店、堺タカシマヤ店も有り
公式サイト: http://simaya.com/