10 創作串揚げ 一正 【前編】
大阪・大正駅のほど近く。気さくな飲食店が軒を連ねるその一角に、ひときわ個性を放つ串揚げ店「一正(いっしょう)」があります。斬新な組み合わせの創作串揚げが口コミで広がり、国内外から多くの人が訪れるようになりました。そんな「一正」の美味しさの“ヒミツ”を、店主にお伺いしました。

他の店にはない、オンリーワンの串揚げ。
「ここだけの特別な食事体験をしていただけるよう、常に工夫を重ねています」。そう語るのは、店主の上野進一さん。大阪で串揚げと言えば、“ソース二度漬け禁止”の大衆的なスタイルを思い浮かべるが、一正では高級食材も取り入れた多彩な創作串揚げが基本だ。
女性客が多いのはもちろん、近年は海外からの来店や口コミも増え、注目度の高さがうかがえる。よく寄せられるのは「手が込んでいるのにリーズナブル」という声。豚肉ひとつ取っても、一般的な厚切りとは違い、モッツァレラチーズとほうれん草、豚肉を重ねた“ミルフィーユ仕立て”で提供している。ひと口で食感や風味が重なり、驚きと楽しさが広がる。
「自分が食べたいと思える、ちょっとしたアクセントを加えているんです」と上野さんは笑う。
経験と探究心から美味しさを追い求めて。

知人を通じた縁をきっかけに、料理の世界へ入った上野さん。
和洋中さまざまなジャンルの店で腕を磨いてきた。その後は自身の店を構えたが、「40代を迎え、原点である地元・大正でもう一度挑戦したい」と物件を探し、現在の店舗に出会った。
「この小さな店で、これまでの経験を活かすなら何ができるかと考えた時、1品ずつ提供する創作串揚げのスタイルが浮かんだんです。この辺りには同じ業態の店がなかったので、コース仕立てでやってみようと決めました」。その着想は見事に当たり、予約困難になる時もあるほど話題に。
「人生一度きりなので、いろんな経験と勉強をしたい。創作を続けていられるのも、探究心が強いからだと思います。まだまだ美味しさを追求していきたいですね」と語る。
旬と発想が生む、新しい味の世界。

上野さんの探究心が主に向く先は、食材の組み合わせ。朝、市場で食材を見ながら、旬の出会いと自身の経験を掛け合わせて発想を広げていくという。「旬は特に意識しています。存分に料理を楽しんでいただきたいので、季節の味や珍しい食材があれば積極的に使います」。
味の足し算・引き算や仕上がりのイメージが瞬時に浮かぶのは、多彩なジャンルで培った経験ゆえ。「薬膳料理では素材を組み合わせて身体にいい料理を作ってきたので、組み合わせるのは自然な感覚になっているんでしょうね」。そう言って出してくださったのは、鯛をジャガイモの衣で揚げ、キウイのジュレを添えた一品。これまで味わったことのない調和が広がり、その美味しさに驚きがこみ上げる。上野さんのアイデアは、思いもよらぬ新しい味の世界へと誘ってくれる。
パンからつくる、そのひと手間が美味しさの違いに。
こだわりは食材や組み合わせだけではない。「パン粉もパンから焼いて作っています」と上野さんは笑う。しかも、串揚げ用とカツサンド用では、それぞれパンも変えているという。
店のオープン当初にさまざまなパン粉や油を試したものの、糖分を含む市販のパン粉は焦げやすいなどの課題があり、「理想を追求すると自分で作るしかない」と判断した。焼き上げたパンは一度冷凍して水分を飛ばし、細かく刻むことで素材を引き立てる最適なパン粉に仕上げている。
「お客さまの期待にお応えしたいと思うと、どうしても細部まで力が入ってしまうんです」。毎日焼き上げるカツサンド用のパンもまた、試行錯誤の末にたどり着いた一品。サイドメニューながら、高い人気を誇っている。
見えないところまで、心配りをちりばめて。
パン粉にこだわる理由のひとつは、「胃にもたれず食べやすい串揚げ」に仕上げるためだという。また、寒い季節には身体を温める作用の食材を取り入れるなど、美味しさだけでなく“食べる人の身体のこと”まで考えて工夫をしている。
「よく『どうしてこの組み合わせ?』と聞かれるんですが、季節や素材の性質、身体への作用、味わいのバランスまで一緒に考えているんです。自然とそういう目に見えない気遣いを加えていますね」と上野さんは目を細める。
油にもこだわり、店では綿実油を使用。「胸焼けせず、美容やコレステロールを気にされる方にも向いている油ですから」。その選択ひとつにも、お客さまへの思いやりが込められている。

次回の後編では、この綿実油についてさらに詳しく紹介する。

店主 上野 進一 さん
サラリーマンを経験後、知人の誘いをきっかけに料理の道へ。薬膳ラーメンから和食・中華・洋食まで、多ジャンルで腕を磨き、二度の独立を経験する。しかし若さゆえの未熟さから閉店も経験した。40代を目前に地元・大正で三度目の挑戦を決意し、2016年、1串ずつ提供するコース仕立ての創作和食串揚げの店「一正」をオープン。和食をベースに多彩なジャンルの技法と知識を融合させた独自の串揚げは、その斬新な味わいから女性客や外国人にも高く支持されている。毎朝、木津市場で厳選した素材を仕入れることから一日が始まり、休日も食への探究を欠かさない。趣味はサウナ巡りで、良い休息の時間となっている。

創作串揚げ 一正
住所:大阪市大正区三軒家東1-17-33 1F
電話番号:06-4393-8021
営業時間:
平 日 17:00〜23:00(LO 22:30)
土日祝 12:00〜15:00(LO 14:00) ※ランチは完全予約 17:00〜23:00(LO 22:30)
定休日:火曜日席数: 11席ホームページ:https://www.issyou.net
公式アカウント:https://www.instagram.com/sousakukusiage_issyou_/



