日本の明太子を生み出した情熱を受け継いで

05 ふくや 【前編】

国内屈指の食の街である、福岡・博多。その名物のひとつに挙げられる明太子を日本で初めて製造販売したのが、老舗明太子メーカーの「ふくや」です。
主力商品である明太子の味を進化させつつ新しい商品を世に送り続ける姿勢と、地域貢献を大切にする心意気などについてお話を伺いました。

1948年の創業以降、福岡の食文化を盛り上げ、明太子を博多名物にまで育て上げた。

情熱から生まれた、日本初の明太子。

福岡県内だけでも200社以上あるという明太子メーカー。その始まりは1949年に「ふくや」の創業者である川原俊夫氏が、幼少期を過ごした韓国釜山の「たらこのキムチ漬」を再現しようと試行錯誤したこと。
失敗にくじけず多大なる情熱をかけて研究と工夫を重ね、明太子を日本で初めて作り売り出した。

「当時は冷凍などの流通がない時代。お客さまに一番良い状態で食べていただきたいとの思いから、弊社では直営店での販売をとても大事にしています」と教えてくれたのは、株式会社ふくや ものづくり部製品開発課の原口祐汰さん。
現在29もの直営店とネットショップで明太子などを販売している「ふくや」と博多名物の歴史は、ここから始まった。

地域とともに、地域のために。

明太子の人気が高まると、真似されないよう特許を取ることを周囲から勧められたものの「初代は、あえて取らずに製法が知りたい方にはお伝えしていったので、明太子は広まったと聞いています」とのこと。自らの利益だけを追求せず、地域とともに成長して明太子を博多名物にまで育てあげた。

また初代が発案した「中洲まつり」をはじめ、「博多祇園山笠」や「博多どんたく」のほか様々なイベントをサポートするなど、常に地域社会への貢献を重視してきた。
そこには「戦後は世の役に立つ生き方がしたい」という初代の想いや博多への感謝があるようで、今もしっかりと受け継がれている。

シンプルだからこそごまかせない。

明太子の原料はスケトウダラの卵。
「『真子(まこ)』というグレードのものを使うのですが、弊社では『真子中の真子』と呼んでいる、明太子にしたらおいしいものだけを厳選しています」。そう原口さんが話す原料の質は、味を大きく左右する最重要ポイント。
現在は旨味があり、粒がはっきりと「立って」いるロシアとアメリカ産のものを使用している。

これを漬け込む調味液はとてもシンプルなのだが、質の高い原料を使っているからこそできる「ふくや」の技。
「それが逆に難しいんですけどね。調味料の味でごまかすのではなく、真子本来の味わいを引き出すよう真っ向勝負でしています」

綿実油が叶えた、明太子の新しいカタチ。

明太子はお土産で大変喜ばれるが、生ものなので冷蔵保存が必須となる。持ち運びのことを考えると、購入をためらう人も多い。
そこで明太子を常温で持ち運べないかと考え、綿実油を使った明太子の油漬け『缶明太子』を開発した。

油へ漬けると、質の良い原料でなければ卵が割れるし臭みが出る。強い風味のある調味液だと味が成立しない。
「これらがないのがうちの明太子の特長でもありますし、綿実油のおかげでクセがなくさっぱりと仕上がります。この常温商品を世に出せたことは新しい強みになりました」。
原材料は明太子と綿実油のみ。コクや旨味もたっぷりの、新しい明太子のおいしさが誕生した。

調味料だけではない、味の決め手。

日本初となる明太子の油漬け『缶明太子』が誕生する前にも、お土産やギフトにできる常温商品『めんツナかんかん』が登場していた。
明太子の風味が生きたツナ缶だが、明太子の粒がたっぷり入ったものも欲しいとのリクエストを受け『めんツナかんかん プレミアム』が続いて誕生。
この時「明太子を足すだけではなぜかもの足りない」と味に悩み、油を見直していきついたのが綿実油だった。
「明太子の旨味をうまく抱きかかえてくれるので相性が良くて。綿実油に出会えてよかったなと思います」と原口さんは語る。

この商品開発で気づいた綿実油の特性や魅力などについて、さらに詳しく教えてもらった話は、次の後編で。

明太子メーカー  株式会社ふくや

1948年、福岡県・博多で食料品卸の会社として創業。創業者の川原俊夫氏が韓国・釜山で食べていた「たらこのキムチ漬け」を思い出し、日本人に合うよう研究を重ね、日本の明太子の元祖となる「味の明太子」を完成させて製造販売を開始した。明太子だけでなく食品の小売りと卸業も行い、業務用スーパーも展開している。博多の食と文化の博物館「ハクハク」も開設し、運営中。地域社会への貢献を重視した経営を行いながら、時代とともに変化し、ニーズに合わせた新商品や地元のサッカー・野球チームをはじめアイドルや映画、イベントなどとのコラボ商品を多数生み出している。

株式会社ふくや

住所:福岡市博多区中洲2-6-10(本社・中州本店)
電話番号:0092-261-2981(中州本店)
営業時間:月〜金 9:00~22:00、土・日 9:30~18:00(中州本店)
定休日: なし(祝日の営業時間 9:30~18:00)
※本店ほか、直営店28店舗+ECサイト有り
Website:https://www.fukuya.com