03 天ぷら 永春 【後編】
最上級のおいしさを追求し続ける、天ぷら専門店「永春」の店主・永井さん。前半に続き、修業時代から使っていたという綿実油と圧搾綿実油の魅力や、綿実油だからこそできる新しいチャレンジについて教えていただきました。

衣が油を邪魔しないし、油も衣を邪魔しない
もともと綿実油を使っていた永井さんは、独立後、知り合いの天ぷら屋さんから岡村製油の綿実油を教えてもらい試してみたそう。「油の感度が段違いだったので驚きました」と実感を語る。
「温度に対して衣の散り方があるんですけど、他のメーカーのものだと粘度が強すぎて散らないのもあるんですよ。
油の中へ入れた時、食材へダイレクトに温度が伝わる感度が他の油はちょっとボケる。岡村製油さんの綿実油だと180度であれば180度の温度と圧を食材に100%伝えてくれるので、そのままの温度がダイレクトに素材へ伝わっているのがはっきりと感じられるようになりました」

胃もたれも嫌な匂いもなく、最後まで料理が楽しめる。
岡村製油の綿実油を使い始めて、気づいたことがもうひとつあると言う。
「匂いです。揚げたときに特有の湯気というか匂いが出てくることがあるんですけど、それがまったくなくて。お客さまにも気持ちよく食べていただけますし、僕も揚げながらしんどくなることがないですね」
確かに店内へ入った時、直前まで天ぷらを揚げていたとは思えないほど無臭だった。
「コースでも匂いや胃もたれを感じずに食べていただけるのは、綿実油の大きなポイントだと思います。最初から最後までおいしい天ぷらが揚げられるよう、とても力を貸してくれています」と教えてくれた。
クセがないからできる、他の油とのアレンジ。
関東の天ぷらでよく使われるのが、旨味の強いごま油。
リクエストを受けて、ごま油での天ぷらにもチャレンジした。「課題がたくさんありました。でもそのおかげで、綿実油はクセがないから別の油と混ぜて香ばしさや強い旨味を足すなど、アレンジができると気づいたんです」。コースの前半と後半、海老の1本目と2本目でごま油を足して旨味を変えてもいいのかもと、新たなアイデアが次々と飛び出す。
「綿実油はネガティブな要素がほとんどない油ですし、価格と性能のバランスもすごくいいのでずっと使っていきたいですね」。永井さんにとって、これからも綿実油は強い相棒となりそうだ。

新たなチャレンジのきっかけは、綿実油の劣化のしにくさ。
「劣化もしにくい油ですね。特に岡村製油さんの綿実油は」。他の綿実油も知っているから出た率直な感想だ。
「悪い油はすぐ劣化して、温度のコントロールが効きにくくなるんです。でも岡村製油さんの油はどの温度帯でもしっかり性能を発揮してくれる。コースだと前に揚げた素材の旨味も含んだ油になって、よりおいしくなるのでありがたいです」。
永井さんはさまざまな追求をしていく様子をSNSで発信している。
そこである時、異色の揚げパンが紹介されていた。「営業後の油は他の調理ではまだ十分使える状態なので、何かできないかなと思って」。新たにお土産となるものを考えての、研究のひとつだった。
「お口直しやお土産など、油の活用方法も考えるようになりました」と新しいチャレンジにもどこまでも意欲が高いのが、永井さんのすばらしいところだ。
クリアな圧搾綿実油で、お客さまに喜んでいただけるように。

「永春」では現在、綿実油の中でも圧搾綿実油を使用している。
きっかけは「ある蕎麦屋さんから教えてもらいました」とのこと。「さらにクリアで雑味がないと感じて。少しコストアップしますが、おいしくなって喜んでいただけるなら、許容範囲だと思ったので採用しました」
油の違いはお客さまには感じにくい変化かもしれないが、作り手としては自信や評判にもつながる大きな違いになる。
「素材の旨味をしっかり楽しんでいただけると思いますので、最高な衣と上質な綿実油を使った天ぷらで、お客さまをお待ちしております」。京都の新しい食文化が、ここから花開くのかもしれない。

店主 永井 雅基 さん
飲食の世界に入った後、天ぷら職人になるべく縁のあった京都の名店で修業。別の手法も習得するために2軒目の店でさらに修行を重ね、ミシュランで星を獲得した海鮮居酒屋でも他の料理や開業の仕方などを学び、2019年、32歳の時に天ぷら専門店「永春」を創業。「-60度の衣」に出会い取り入れた後も、さらなる理想の天ぷらをめざして試行錯誤と熱心な探究を続けている。休日は子煩悩な父としての顔も。昼は気軽に楽しめる定食を、夜は季節の味わいが堪能できるコース料理を提供している。

天ぷら 永春
住所:京都市中京区堺町通二条上ル亀屋町167-1 デュビュイ亀屋ビル1階
電話番号:080-3767-7500
営業時間:12:00~14:00、18:00~22:00
定休日: 不定休
席数: 8席(カウンターのみ)
公式アカウント: https://www.instagram.com/tempura_eisyun/