02 搾油・抽出、リンター・ミール工場編
前回は、綿の実の周りについた綿を取り除き、「核」と「殻」に分ける“脱穀工程”を見学しました。第2回は、いよいよ油をとりだす工程です。油を搾るだけでなく、さらなる工夫もあるのだとか。しかも綿の実は「捨てるところがない」といいます。その理由を、現場で確かめてきました。

熟練の“勘”が決める、一番搾りの加減。
脱穀で殻と核に分けられた後、核が運ばれるのは搾油工場(通称「EX(エキス)」工場)です。まずは圧扁ロールと呼ばれる機械に投入し、粒状の核を転圧してフレーク状にしていきます。ここで核の細胞壁を壊し、搾油しやすい形状を作ります。その後大きな加熱釜に入れ、熱と水蒸気を入れながら蒸し、油がにじみ出やすい状態に整えます。釜へ張り込む量(投入量)や加熱の加減によって油の搾り具合が変わるため、とても重要な工程です。
この現場を統括する課長代理のYさんは「もう、最後は勘ですね。どのくらい入れたらうまく搾れるかは、経験がものを言います」と話します。原料によって張り込み方が変わり、熱のかけ方もそれぞれ違うのだとか。
熱を加えた後は、「エキスペラー(圧搾機)」という機械で、原料をギュッとねじりながら押しつぶすようにして油を搾ります。ここでとれるのは、いわゆる「一番搾り」。圧力をかけて原料から油をとりだす、昔ながらの製法です。
水分量が決め手。搾り具合は、原料次第。

「ここではもうひとつ、大きなポイントがあるんです」というYさん。それが原料の「水分量」。原料の綿実は複数の国から輸入しているため、産地によって水分や油の含まれ方が違います。「それに合わせて搾りの加減も変えます。ペラ粕(搾り粕)の状態を見て判断するんですが、ここできれいに搾れていないと、後の工程でロスもトラブルも増えてくる。しかもここが止まると後の工程が全部ストップするので、常に緊張感を持ってやっています」
工場の“心臓部”ともいえる工程を支える仕事に、Yさんは「プレッシャーはありますけど、うまくいった時の達成感は大きいですね」と笑顔を見せます。
搾り粕から、最後の一滴まで。油をとりきる抽出工程。
圧搾したあと、残ったペラ粕(搾り粕)は次の抽出工場に運ばれます。「ここではペラ粕の中に残っている油を、もう一度化学的にとりだす作業をしています」と案内してくれたのは、この現場の班長であるKさん。使うのは「連続抽出機」という設備。「有機溶剤を使って、効率よく抽出します。ただし、そのままだと油に溶剤が残ってしまうので、加熱と真空で溶剤をしっかり蒸発させ、きれいな油にしてから次へと送ります」

搾って、抽出して、二段階でしっかりとりだされる綿実油。Kさんは「抽出後のミール(綿実油粕)に残る油が多いと品質やその後の工程にも影響するので、抽出の調整には常に気を配っています」と、現場でのポイントを教えてくれました。
安全と品質を支える、保全の仕事。
「溶剤」と聞くと、危険なイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。Kさんは「確かに引火性があるので注意は必要です。だからこそ、設備の点検や保全には特に力を入れています。火災や爆発などのリスクを防ぐのも、私たちの重要な仕事ですから」と話します。
そのためにも欠かせないのが「機械の洗浄」です。「油を扱っていると、どうしても細かいカスが配管の中にたまりやすいんです。放っておくと詰まって大変なことになってしまいます」。作る工程と同じくらい、しっかり機械のメンテナンスをしておくことが大切なのだと実感しました。
油の後に価値が続く。綿の実を使いきる副産物。

圧搾と抽出でしっかり回収した油は、次の「精製」工程へ進みます。が、その前に、油をとりだした後のミール(綿実油粕)はどうなるのでしょうか。
「『綿実油粕』として袋詰めし、主に肥料や飼料として出荷しています」とKさん。工場では、大型の自動包装設備で紙袋に詰め、ミシンで縫い閉じます。「袋は重くフォークリフト作業が多いので、少しのミスが事故につながってしまいます。そのため運転には細心の注意を払っています」と続けます。
また、最初の脱穀で取り除いた綿や殻も様々な用途で活用されます。まるでホコリのような短い綿毛の「Bリンター」は、まとめてプレスして家畜飼料やきのこの培地に。「コットンハル(外側の殻)もきのこ培地に使われますし、圧搾する時に再び核と混ぜて滑り止めのようにし、油を搾りだしやすくもしています」とYさんも説明してくれました。
油だけでなく、油粕も綿も殻も活用される。綿の実が「捨てるところゼロ」といわれる理由が、よくわかりました。次回はいよいよ、油を製品に仕上げる「精製」の現場をご紹介します。

岡村製油株式会社
大阪の南東部大阪府柏原市で、明治25年に創業。
主に綿実による搾油事業を行っており、綿実油は使いやすく素材の味を活かすことから、多くのプロの料理人より信頼されている。



