01 脱穀工場編
植物油のなかでも綿花の種子から取れ、プロの料理人たちに高く評価されている「綿実油(めんじつゆ)」。これを国内で唯一製造しているメーカーが、岡村製油です。この綿実油は、どのような製造方法で、どのような思いや心がけから作られているのでしょうか。
実際に製造工場を見せてもらいながら現場の方々から伺った話を、全4回にわけてご紹介します。

手間と時間をかけて丁寧に作られる綿実油。
綿実油の製造は、綿花の長い繊維を取り除いた後に残る種「綿実」から始まります。この綿実を割って中の実(=核)を取り出す「脱穀」に続き、「圧搾」や「抽出」で油を絞り出し、さらに「脱酸」「脱色」「脱ロウ」「脱臭」などの精製工程を経て、最後に容器へ「充填」して完成します。綿実油は一般的なサラダ油に比べて脱色の調整が難しく、脱ロウという追加工程もかかります。しかも、小さなひと粒の綿実から得られる油は、たった15パーセント。まさに、手間も時間もかかる、貴重な油なのです。
今回はその最初の工程、「脱穀」を担う工場を訪ねました。
細かい綿を取り除くところからスタート。

まず案内されたのは、大きなコンテナの中。目の前には白くて大きな山がありました。これは、主にブラジルやアメリカ、ギリシャ、オーストラリアから輸入された、綿実が積み上げられたもの。手にとってみると、綿に包まれて柔らかそうに見えますが、実際は指では潰せないほど硬い種。
「この綿実の周りの短い綿を取り除くために、うちでは『リンターマシン』という設備を使っています。綿をむしり取るような感じですね」と教えてくれたのは、この現場担当のN班長。
「リンター」と呼ばれる綿実の周りの短い綿が付いたままだと、機械でうまく割ることができず、後の工程にも支障が出てしまうのだそう。そのため、まずはこの「リンターマシン」で綿をきれいに取り除きます。その後、綿実を割って、硬い殻と油を含んだ中の核の部分に分けていきます。これが脱穀工場の役割です。
安全な運転を支える、メンテナンスの重要性。
「リンターマシン」の前へ行くと、大きな音を立てて勢いよく稼働していました。
「この中にある『リンターソー』という刃物が命なんですよ」とN班長。
家庭でも包丁などの刃は研がないと切れ味が落ちますが、機械の刃となるとメンテナンスはより慎重さが求められます。「『リンターソー』の刃は回し続けるうちに、少しずつ摩耗して丸くなってきます。そうなると綿実との摩擦が増え、熱を持ちやすくなってしまって…。中に鉄粉や小石が混ざっていると、火花が出てしまうこともあるんです」。最悪の場合、それが着火元になって火災のリスクが出てくるとのこと。
そのため、日々の点検や刃の調整が非常に重要だと、N班長は強い口調で語ります。

職人技が光る、繊細な調整作業。
大きな円柱型の「リンターソー」は、のこぎりのように目立てをし、常に鋭さを保つ必要があります。「うちでは専用の『ガンマー機』を使って目立てをしています。この調整がなかなか難しいんですよ」とN班長。
刃を研ぎ直すには40〜50分ほどかかり、微妙な調整が必要なため、経験に基づいた判断が欠かせません。少しのズレでも、目立ての仕上がりや商品となる綿(リンター)の品質に大きく影響するからです。「リンターの分析結果を見ながら、目立ての具合や綿のカットの状態を細かく調整しています。他にも、音や匂い、振動が普段とちょっと違うと感じたらすぐ確認するよう注意しています。何事も早期発見が大切ですから」。
安全でスムーズな工程を保つため、N班長たちは工場内の様子に、いつも目を配っています。


24時間体制で、効率的な生産を実現。
工場の中には、大小さまざまな設備がずらりと並んでいます。綿実油の製造には、なんと200種類以上の機械が使われているのだとか。これらを効率よく稼働させるため、「三交代制で24時間体制をとっています」とのこと。
綿実の品質が安定しないときなどは、機械の調整がより難しくなるそうです。「そんな時こそ、『リンターマシン』やクリーナーの調整をしっかり行い、搬送ラインが詰まったり、次の工程に影響が出たりしないよう注意を払っています」。
昼夜を問わず、より良い状態で次工程へバトンを渡すことを目指して。脱穀工場では、細かい気配りと判断力を備えた職人技と情熱をもって、日々の作業が行われていました。
次回は、綿実油を搾る現場の様子をご紹介します。

岡村製油株式会社
大阪の南東部大阪府柏原市で、明治25年に創業。
主に綿実による搾油事業を行っており、綿実油は使いやすく素材の味を活かすことから、多くのプロの料理人より信頼されている。



